社会福祉制度・社会保障制度は、その国の歴史的・文化的・社会的・経済的要因によって形成され、国によってそれぞれの意味と内容は異なる。しかも、先進工業国における社会福祉制度・社会保障制度は、国際化の潮流の中で、各国の制度が相互に影響しあいながら、歴史的に発展してきている。第二次世界大戦以降、我が国はイギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデン、デンマーク、などの国々から大きな影響を受け、我が国なりに社会福祉制度・社会保障制度を形成してきた。しかし、1980年代後半以降において社会福祉サービスの提供組織をみると民間組織の役割が大きくなり、しかもそれらの組織は多様化してきている。つまり、21世紀型の福祉サービスの供給体制を構築しなければならなくなってきているのである。 そこで本講義では2つの目標を掲げていく。第一の目標は我が国の社会福祉制度・社会保障制度を他の国々との国際比較により国際的な視野から位置づけ、その特徴を把握することに置く。第二の目標は21世紀における少子高齢化の進行によって、急速に変容しているサービス提供組織の現況と今後の課題を、他の福祉先進国の例を踏まえながら整理することに置く。